研究室の歴史
本講座(研究室)は,地球物理学第2講座として,大正10(1921)年4月に開 設されたわが国最初の海洋物理学に関する講座です.初代担任者は野 満隆治博士です.講座開設から第2次世界大戦終結までの時期には,海流と海面変動の 研究に主力が注がれ,高潮や陸棚セイシの研究で優れた成果をあげました.また,塩淡 地下水境界面や揚水井戸の理論,洪水などの陸水学に関する問題にも重要な成果をあげ ました.
昭和22(1947)年に速水頌一郎博士が,昭和41(1966)年に国司秀明博士 がこの講座を担任し,海洋・大気間の境界過程(風波を含む)や沿岸海洋学の発展に主 力を注ぎました.昭和35(1960)年には本学防災研究所の協力を得て,和歌山県 田辺湾にわが国最初の海洋観測塔を設置し,画期的な成果をあげました.
平成元(1989)年,今里哲久博士がこの講座を担任してからは,全球海洋における 水塊形成と物質輸送過程の解明を目指し,数値モデリングとラグランジュ解析を軸とし た研究に主力が注がれるようになりました.平成11(1999)年に淡路敏之博士が 講座を担任してからは,観測データと整合する数値モデリング(データ同化システム) の手法を確立し,海洋のみならず大気を含めた気候変動の推定・予測に関する先駆的な 研究を行いました.平成24(2012)年に秋友和典博士がこの講座を担任してから は,対流運動から海洋深層大循環まで,海洋変動の素過程力学の解明により力が注がれ ています.